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「私」という流れがあると思います。「共」の部分を担うのは「公」の行政だけではないということです。私達自身「私」も「共」の分野を担わなければいけない時代に入ってきています。とすれば「共」の部分というのは「公」の行政と私たち市民・個人が担うということで、「公」と同時に私たち個人が責任を持つ形でオーバーラップしてくるわけです。「共」の分野は「公」の行政と私達個人の努力の活動が重なり合って人々の生活を良くすることにつながっていくのです。ここが行政とボランティア活動というものがパートナーシップを持たざるを得ない原理なのです。
このシンポジウムが持っている問題意識は単に先走っているだけではなくて必ず自治体とボランティアのパートナーシップは生まれてきますので、それまでの過程でできるだけ新しい実験ないしは試みをスムースにやっていこうと呼びかけてるものです。

 

●仙台の事例

 

ある1つの事例だけ申し上げます。仙台市においては、95年に地元の新聞社「河北新報」や東北電力等の企業と共同で、ボランティアの支援をしていただけることになりました。私どもはボランティア活動を盛んにし自立した力強い活動をするために、アメリカのボランティア活動の研修をさせて欲しいことが1つと、帰国後の研修報告の開催、更にアメリカとスウェーデンから溝師を招聘し、1000人規模のシンポジウムを開催したいので、その招待費用と会場費用等を出してほしいとお願いをし、了解を頂きました。私もアメリカへ同行いたしまして、今日こちらにいらっしゃるアナ・ミヤレスさんのマイアミ「タイムダラー」にも行きました。
仙台市のいろいろなボランティアの方々がアメリカのボランティア活動を視察、交流され勉強されました。帰国後、集会を開きましてその直後の95年の8月に仙台で「シニアのためのネットワーク仙台」というボランティア団体を立ち上げました。現在、会員数は700人を超えており、すでにミニ・デイケア、つまり高齢者や要介護者の方を1日お預かりするデイケアを公共の建物ではなく、2つの家(部屋)を借りて実施しています。1つは花屋の2階で20畳位の広さなので1日に5〜6人しか預かれませんが、日中に活動しています。もう1つの方は、個人の家の1階を開放いたしまして、同じく5〜6人預かっています。それから、給食サービスも始めました。廃業した飲み屋さんを月に45000円ほどで借りて、1食500円で材料費分を出していただき、今のところ50〜60食ですがお年寄りに週3回程食事を配っています。
市が私たちのボランティアグループに研修費とシンポジウム開催費用を出してくれて、まだ小さな実験ですが、ボランティア活動が始まりました。これに支出した金額は相当なものですが、例えば1人の方が特別養護老人ホームに入ると、皆さんの税金の中から措置費が出ていますが、大体年間300万円程度かかっています。痴呆症の方や要介護の方を家で面倒見れないという理由で特別養護老人ホームに入れるわけですが、例えばデイケアで日中お年寄りを預かってもらうと、介護をしなくてよい時間ができ、その間家族は仕事ができるので、特別養護老人ホームヘ入所させなくても済んだとします。仙台のボランティア団体は、毎日10人の方のお世話をしているわけですから税金で言えば、10人の方を全員特別養護老人ホームヘ入れますと3000万円の税金により予算が支出されるわけ

 

 

 

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